英語BL小説「Fallocaust」第13章 英文読解ガイド
毎月、読書会をやっています。途中参加歓迎です。
https://twipla.jp/events/445933
1〜2章は作者に許可いただいて翻訳したので、こちらからどうぞ。
『Fallocaust』はKindle Unlimitedでも、普通のKindleおよび紙の書籍でも読めます。そして「なか見!検索」で9章冒頭までお試し読みできる!
第13章の要約
残酷描写:なし
性行為:なし
読了時間の目安:45分(15ページ)
**
*この章の視点(POV: Point of View)キャラクターはリーヴァーです。
リーヴァーはドクの診療所で目を覚ます。レオとグレイソンとドクに手当される。家に帰る途中キリアンが追いついてきて、自己紹介し、一緒に家に帰る。
ストーリーライン
・意識が少し浮上したり引き戻されたりしている朦朧とした状態から覚醒する
・リーヴァーはキリアンの様子を見ると言い張って起き出す
・町のみんながこの救出劇に注目していて、リーヴァーはヒーロー扱いになっていると聞かされる
・怪我の状態は悪いが、リーヴァーは早く家に帰りたがる
・グレイソンとレオは、キリアンが起きて手当が終わったら家に送り届けると約束する
・リーヴァーは救出が成功したことで今までの他人と距離を取ってきた生活ががらりと変わってしまうことを認識し始める(140p)
・混乱しながら、まずは自己紹介しなければと思いつく
・キリアンが追いかけてきて、ふたりは見つめ合い、リーヴァーは迷いを振り払ってキリアンを抱きしめ、自己紹介する
・リーヴァーはキリアンを連れ帰り、家と拾い集めたコレクションを見せる
・不安がるキリアンに、安全のための設備があることを説明する
・リーヴァーの無神経な冗談にキリアンが泣き出す
・リーヴァーが脳震盪に見舞われ、キリアンが世話をする
・ふたりはソファーで眠りに落ちる
・目を覚ましたリーヴァーは背中の痛みを感じ、ふたりはドラッグをやる
語彙・文法
Josh the grounds keeper wasn't doing his job, I guess. (135p)
訳)整備人のジョッシュが仕事を怠っているようだ。
- was doing:一時的な状態を表す進行形。いつも仕事をしていないのではなく、この場合に限って怠っている、その結果窓が汚れているということ。過去形なのは英語の小説の地の文が基本的に過去形だからです。意味は現在進行形で解釈してOK。
なぜいきなりJoshとかいう知らない人物が出てくるのかというと、意識が朦朧としているリーヴァーが窓を見て考えている混乱した状態だからでしょう。この話から石鹸の香り(キリアンの香り)に話を繋げるためなので、「誰?!」と混乱しないで大丈夫です。
how skinny he had let himself get. (137p)
訳)どれだけやせっぽっちになってしまったかということ
強調のためにskinnyが前に持ってこられているという考え方ができる。
元の文は He had let himself get (that) skinny.
(これほどまでに)痩せてしまった →前に持ってくるとHow skinny になる
- let 人+ V原型;使役動詞;人にVさせる →自分自身を痩せっぽっちにさせる
- had + 過去分詞;過去完了
love thing (137p);愛とかいうもの
"it's been a long day."
"it sure damn well has." (138p)
訳)「大変な一日だったんだ。」「そりゃあもちろん大変だっただろうさ。」
It has been a long day なので、現在完了で長い一日という状況やその影響がまだ続いていると言う意味があります。itは天気・時間を表すときの主語としてのitというやつ。sureもdamn wellも強調です。省略を補うと、it (sure damn well) has been a long day. となります。
Skinny little fucker. (139p)
訳)やせっぽっちな野郎め。
- skinny;やせた
- little;親愛や軽蔑の念を強調して言う語。今回は前者
- fucker;悪口としての意味もあるが、「あいつ」くらいの意味で言う場合も。親しげな含意もあり。
キリアンのことです。
"You and Killian can also get first dibs on the merchants' caravans. I think that's your biggest haul to date!" (140p)
訳)「お前とキリアンはキャラバンの荷物から分け前を取っていいぞ。今までで一番の大漁だな!」
- dibs;分け前(俗語)
- haul;(主に盗品の)収穫・儲け
- to date;今まで
I remembered back to when he was gone, and I told myself to just stick to the basics like Grayson always said. (141p)
訳)キリアンが姿を消したときのことを思い出していた。グレイソンがいつも言っているように基本に帰れ、と自分に言い聞かせた。
- remember;目的語を取る他動詞と、そうでない自動詞がありますが、今回は後者。backは副詞ですね。
- stick to;「くっ付く」というのが基本的な意味。この場合は(基本に)「忠実にする」。
人間関係の基本=「自己紹介する」ということですよね。確かにそうだね……。
Then suddenly I could feel the confusion drip away from me like water on wax. (142p)
訳)唐突に、混乱が油膜に弾かれる水滴のように払われるのを感じた。
突然雷に打たれたように何かを悟るリーヴァーであった。
I was so tired. (....) I just wanted to come back down to earth. (....) I didn't need to put on a show for Killian. (147p)
訳)ひどく疲れている。落ち着きたいだけだ。(....) キリアン相手に見栄を張る必要はない。
- come (back) down to earth;(現実に戻ってきて)落ち着く
- put on a show;見せつける・誇示する
めまいがしてキリアンに世話されるのを格好悪いと思うリーヴァーが、自分に言い聞かせている部分。ちょっと見栄っ張りなんですよね……。
I hated being touched and this boy was just all over me. (148p)
訳)人に触られるのが大嫌いなのに、こいつときたらベタベタとくっついてくる。
- andは文脈により逆説や順接の意味の接続詞になります。
"I want to do what you do." (149p)
訳)「君がやることをやりたいんだ。 」
- what ; 関係代名詞 (=I want to do the thing which you do.)
キリアンはリーヴァーに同一化(尊敬する人を真似ること。心理学用語)しようとしているようです。いちばんリーヴァーをヒーローとしてみているのはキリアンということでしょう。
この章にはポピュラーハイライト(多くの人がハイライトした部分)があります。それについてはこちら。
コメント
恋の戸惑いまでもグレイソンの「基本に戻れ」という教えで解決しようとするリーヴァー。これだけのことがあった後の「My name's Reaver」「My name is Killian. It's nice to meet you, Reaver.」は堪りません。学校英語役に立っている!
ところで、リーヴァーの手当されるのを嫌がるところや、キリアンに世話をされるのを面目が潰れたように感じるのは〈有害な男らしさ〉ですよね。なぜアメリカン・ヒーロー(ファロコーストはカナダですけどね)で病院から逃げ出そうとする人が多いのか男らしさの病を考えると納得できました。