第七官界の中心で咆哮する

イチオシのカナダ発ポストアポカリプスBL小説『Fallocaust』をはじめ、英語のM/Mロマンス(BL)を中心に、BL小説などをレビュー。

ポストアポカリプスBL「Fallocaust」第17章の読み方

 第6回読書会の範囲でしたが、終わらなかったので第6.5回読書会を行いました。今回から、読書会参加者に作って頂いたメモを掲載します。

 

1〜2章は作者に許可いただいて翻訳したので、こちらからどうぞ。

『Fallocaust』はKindle Unlimitedでも、普通のKindleおよび紙の書籍でも読めます。そして「なか見!検索」で9章冒頭までお試し読みできる!

 

 

 

第17章の要約

残酷描写:あり

性行為:あり(性暴力)

ページ数:27ページ

 

**

*この章の視点(POV: Point of View)キャラクターはリーヴァーです。

 

悪夢を見たキリアンの言葉で、誘拐に関わったレギオン兵の生き残りの名を知ったリーヴァーは、その二人の兵士をレノに探させる。その日の夕刻に、リーヴァーとキリアンはレノの家に行ってドラッグやゲームで楽しむが、そこに探していた兵士の情報が入る。リーヴァーとレノはキリアンを残してレギオン兵狩りに向かう。

 

ストーリーライン

・リーヴァーはキリアンの叫びで起こされ、キリアンを正気づかせようとする

・リーヴァーは、キリアンの言葉から、生き残りの兵士を殺さない限り心の平穏は訪れないと気付き、殺害を誓う

・レギオン兵の名を強引に聞き出し、無線でレノに調査を頼む

・キリアンはリーヴァーの強引なやり方を責めてくってかかる

・一眠りし、アラスの広場へ向かうと、グレイソンに引き止められる

・グレイソンから商隊の荷物の分け前をみせられる。レイヴンが指名手配されていることを聞く

・アラスの外の岩山の上にあるレノの家へ行く

・最初は固い態度だったキリアンもドラッグをやり、マリオカートをやって盛り上がる

・探していたレギオン兵が見つかったと無線が入る

・リーヴァーとレノは必死に止めるキリアンを振り切って出かける

・見付けた4人の兵士は人違いだった。リーヴァーはレノは兵士をレイプするのを手伝う

・帰ってくると、キリアンはグレイソンに連れられてアラスに帰った後だった

・アラスの家に戻ってきたリーヴァーは人違いだったとキリアンに告げ、ふたりは眠りにつく

 

語彙

Uneasy 不穏、不安な状態
Keep someone from 人に〜させない
liability 負担、邪魔になる、足手まとい
the last straw 寓話から。最後の一押し。堪忍袋

参考:https://www.bloomsbury-international.com/student-ezone/idiom-of-the-week/1395-the-last-straw/

tentacles 情報網 pipeline
matters 否定形で使われることが多い
neither do you 君も分からないはずだ
Leave out 言わないでおく

“Dream on.”夢見てろ、冗談きつい

clearing 疑念を晴らす

been picked clean 探し尽くされる

kept them confined 留めておく

agile 柔軟、身軽

tiny 小さくて可愛い

“The world is poisoned, that’s why.”

Our standards レノとリーヴァーの満足いく基準

“Fetch 取ってくる
you’re so mean 意地悪

hooked 中毒

Speaking of which,

“How do you know?” Whyではなくhow

shit deal 条件が悪い

Rumour 噂では

cicaro 愛人、ペット 物語特有の語

farfetched 突拍子もない

cautious 警戒する

shit-eater smug grin ドヤ顔

racket 大騒ぎ

He wouldn’t let it go, 彼はスルーしないだろう

forts 要塞

disconnected 離人症状態 薬物でトリップの際も使う

 (@ajiconne さん作成)

 

文法

p.200

2段落目 the source 聞き手に対しての新情報/旧情報という観点で冠詞を使い分けている(話し手視点ではない)

 次の文のa screamのことを指している

 寝起きでねぼけてちょっと事態把握がおぼつかない感を醸し出している。

 

p.201

as if checking to make sure they weren’t there

theylegionariesのこと

・”But it kept them from raping me.” Itキリアンの前の文脈・全体を指している(Ravenが来るとキリアンが言ったこと)

Itのおかげでthemraping meから遠ざけたそのおかげでrapeされなくて済んだ

9段落冒頭”One held my arms back, ……”被害について語っている場面だが、日本語のよくある話し方とは異なって「(自分が)が〇〇された」という語り方ではなくて「(加害者が)(自分に対して)〇〇した」という描写の仕方をしている。英語っぽい書き方

liablity 字義的には「負債」

 「足手まとい」的に使うことも多い。 “I don’t wanna be a liability.”などなど

・”Six of them found me. ……”の箇所前の章たち、リーヴァーがカチコミをかけた場面などを踏まえてここでの人員の数・動きが判明する。

 最初の6人のうち2人が逃れていることが判明(その逃れた2人をリーヴァーが始末したいという風に決意する)

lowering his gazeうしろめたさ等のしぐさ

・”Please don’t make me”make me (tell their names)等が省略されている。使役動詞のパターン

・ページ末尾 the last straw for me

straw藁 ラクダの逸話から派生して ついに耐えきれなくなる負担[行為,事情].

 

p. 202

・“No, I’m going to fucking come for them.” No, (they are not coming for you) カッコ内が省略

彼らが来るのではなくてこちらからカチコミをかけにいくという強気姿勢

tentacles(触手)情報 比喩的な使い方

 

p. 203

・”That’s all that matters.” matter重要である という意味の動詞 

c.f. 北米で話題のBlack Lives Matter

 また否定形で用いられるケースが多いため。Black Lives Matterという標語はBlack Lives (Doesn’t) Matter という現状があるという前提をふまえてできている。否定形のほうが想起されやすいということ。

pipeline先ほどのtentacleと同様にここでも情報網という意味で用いられている

I stood my ground.一歩も引かなかった(外部からのパワーに圧し負けずにずっしり立ち続けている感じ?)

・”You have me.”行かないでと懇願するキリアンに対してなだめる上手い言い回し

 現在形なのでウソは言ってない。(ただし未来においてYou will have me.とは確約してない)

 

p.204

I had earned the nickname teufel, meaning devil, for a reason.

teufelドイツの悪魔

for a reason理由がちゃんとあってのことなので

悪魔というあだ名があるのには理由がある(それだけの戦闘力がリーヴァーにあり、それに関する定評がある)ということ。

I left out the details about……

leave(残しておく)details(詳細)を残しておくということで、言及せずに触れずにおいておくということ

・キリアンの発言”I’m coming.” 予定としての現在進行形comeするということに対する強い意志の強さ(予定といえるくらいの)

・”If it will be as safe as you say it is, … …” itリーヴァーがlegionariesにカチコミをかけること

 

p. 205

・”If you’re not going to risk it with me, why do I have to risk it with you?”

risk itlegionariesにカチコミをかけるという危険を冒すこと

with me(自分と一緒に危険をおかす一緒に行く・連れていく)じゃないというのなら、なぜyou(リーヴァー)がその危険を冒すことを看過しなくてはならないのか?といった感じの理論的な追及

 

p. 207

・”He’s not going to like it.” He = キリアン キリアンをこの件の会話を聞かせたくないという旨を、3人称をキリアンの目の前で使うことで距離があるような感じを出して表現している。

実際の英語会話の場面において、このような代名詞の使用法はあまり好ましくない(失礼な言い方である)とみなす話者も多いらしい。

he kept them confined them = 前文のmedical advances 複数形に注目するとわかりやすい

 

p. 209

・”…… You’re tiny.” The boy frowned.

ちっちゃくてかわいいね、みたいな言われ方をしたのでキリアンがちょっと気分を害している。

・”…… Play to your strengths.” 己の強みを活かしなよ

・”…… it had taken ns us years to make them to our standards.”

to our standardsこういう強度の家を作りたいなという願望・そのレベルにかなうようにするということ

 

p. 211

・”Do it, you’ll bring everyone down and we’ll all resent you for it.”

orより前のことをしろ、さもなくば……(or以降のようになるぞ)

・”…… you’re so mean to him.” ここにおけるmeanは形容詞 卑劣・下品などの意味、ここでは軽くいじわるくらいの意味

・”…… Speaking of which, ……” そういえばそのことについて思い出したわ!くらいの使い方

which漠然とした指示対象でSpeaking of 〇〇という風に具体的な意味があるわけではない(関係代名詞由来?)前後の文脈によっていろいろ指せそう

英会話で頻出表現、話題転換等にガンガン使おう

 

p. 212

・”How do you know?”Why do you knowなどの聞き方ではなく、howを使って訪ねるという形式で慣習化している

 

p. 213

cicaroファロコーストオリジナル用語 ペット・色子

Even though the thought of fucking Silas was farfetched it was ridiculous.

farfetched あり得もしなさそうなこと

 

p. 215

Perhaps he thought Reno might be more competition to him

p. 216

・……, closing the door behind me on his muffled wail.

ここにおけるonは空間的な意味ではなくて拡張された意味

 抽象的な隣接性を指す

It wouldn’t take me long to gut and skin……

 ここにおけるgutskinは動詞で用いられている 内臓を抜く/皮膚を剥ぐ

 

p. 217

・”She’s right, see the light?” shesee, rightlightで音遊びというような感じ、発音注意

She無線で情報を伝えてくれた女性のこと

She’s right彼女の言ってたことが確かに正しかった

Well, they knew what they were signing up for…….

sign up 登録する + for 〇〇のために

 〇〇のために登録したというのは彼らも知っているはずだlegionarieになった際

 

p. 224

In spite of myself我知らずのうちにって感じ

 

(@arbiter_osaka さん作成)
 

コメント

ここまで読んできて、いちばんのドン引き場面(当社比)があるこの章ですが、それはそれとして、強くて守ってくれるスパダリキャラになってきていたリーヴァーの、性格の微妙な面も見えてきます。キリアンの願いより、自分がすべきと思ったことを優先する頑固さ、そのためには恋人も突き放す冷酷さ。そして、性的に潔癖というか、これからキリアンと親密なふれあいができるのかという読者の疑問をレノが代弁して殴られていますね。 笑

ギオンの捜査が迫ってきている感じもあり、これからまた一波乱ありそうな予感で次章へ。